1990年・春(1)
1990年、春。
桜田匠と日向正寛、須々木悟朗、椿慎吾の仲良し4人組は、安田記念が行われる東京競馬場にいた。当然、お目当ては当然オグリキャップだ。
4人は首都圏で行われるビッグレースは必ずといっていいほど競馬場に足を運んでいる大学3年生。大学の競馬サークルを通じて知り合った仲間達。
それぞれの苗字に季節の植物の名前が入っていることから春夏秋冬の4バカとサークル内で呼ばれ、「俺の季節だから、間違いなしだ。」と予想をし、外すと他のサークルのメンバーからお前のせいだといわれるといったようなやりとりをしてふざけ合うこともあったり、大真面目に予想をしたりと競馬を楽しんでいた。
競馬法により、馬券を買うことは厳密にいえば違法なのだが、そんな事は関係なく、多くの大学生達は普通に馬券を買い、競馬をやるのは当たり前のことだった。
中には稀に予想だけをして馬券を買わないという仲間もいたが、大概は馬券を買い、その結果に一喜一憂していたし、彼らもまた当然のように馬券を買い、競馬ライフを謳歌していた。
当時は早い者は高校生くらいから、大人の遊びを覚えていくのだが、遅い者でも大学に入ったところで、合コンやらサークルでの飲み会やらで、酒やタバコを覚え、同じように競馬やパチンコやマージャンといった大人の遊びを覚えていく。
酒やタバコは20歳からで、パチンコは18歳なのに、競馬は未成年及び学生は駄目。それぞれに制限年齢が微妙に違うのは仕方ないとして、何故に競馬は20歳を越えても学生が駄目なのか?桜田匠は疑問に感じながらも競馬を楽しんでいた。
可笑しな法律があるものだ。学生でも成人なのだから、せめて学生のところを高校生に変えるとか、学生の場合は買える金額に制限をつけるとかいろいろ方法はあるはずだ。
学生に馬券を買わせないことよりももっと規制しなくてはならないことがあるはずで、改正したり、新たに施行したり、削除するべき法律なんてたくさんあるはずなのに。そんなことを考えながら、法学部の学生であるくせに違法なことをしている、と思うと少し気がとがめたりはするのだが、くだらないと思っている法律を破っている自分がなんだか面白くて、やっぱり辞められない。
匠は生まれた場所が中山競馬場のすぐそばで、しかも小学、中学と中山競馬場が目の前にあるの学校に通っていた。月曜の朝ともなると、校門付近の道路や校庭などには捨てられた馬券が沢山落ちていて、その馬券を掃除するのが生徒達の仕事だった。

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